メキシコ
SECTION 1: 市場見通し
1.1 日本の企業文化の影響に対するあなたの国の姿勢を要約してください。
メキシコは、日本企業の体制と日本人の勤勉さを高く評価し、賞賛しています。
日本企業からの投資は年々増加しています。特に、自動車業界や製造業での投資が目立っています。
1.2 今後12ヶ月における日本からあなたの国への投資の見通しは?
メキシコ政府は公式の投資予測を発表していませんが、日本の年間直接投資額は過去5年間(12億~20億ドル)と同じ規模になる見込みです。
SECTION 2: 外国投資の承認
2.1 外国資本投資の認可プロセスとスケジュールを説明してください。
メキシコでは、原則として外国企業の設立に特別な認可は不要です。ただし、政府機関、メキシコ資本の民間企業、非公開企業が行う事業の活動に応じて外国資本の参入率が制限されています。
外国資本の参入率が制限されている業種で、この制限を超える場合には、外国投資委員会に許可を申請する必要があります。
この申請は書面にて委員会に提出し、委員会は申請を受理してから45日以内の申請を承認または却下することが義務付けられています。
2.2 特に規制されている分野での投資の制限はありますか?また、政府はそれらの分野に於ける特別な権限を有していますか?
一般に、メキシコで外国法人を設立する場合の制限は殆どありません。外国投資法では、航空、船舶、港湾サービス、カボタージュ、金融サービス、送配電、原子力発電、ラジオ放送などの限定されたの業種における外国直接投資に一定の制限を設けています。
政府機関の事業に対しては制限が厳しく、メキシコ合衆国の戦略としてメキシコ憲法で認められている事業に限定されています。
2.3 どの機関が競争承認を監督していますか?また、合併承認のプロセスの概要を説明してください。
事業競争の監督機関は、連邦競争委員会と連邦通信機関です。
連邦競争法では、資産・株式の取得、合併などの取引が法律で定められた金銭的制限に基準に達する場合、所管官庁/機関からの承認を事前に承認を得ておくことが義務付けられています。
適用法によれば、すべての取引は、取引の実施前に競監督機関に通知しなければなりません。また、当事者は、承認を得ずに取引を完了させてはなりません。
届け出が行われた場合、政府機関は、法律に基づく要件が満たされているかどうかを評価し、必要に応じて、取引に関連する追加情報を請求します。
正当な理由がある場合、上記の手続は変更される可能性があります。競争上の重大な懸念がなければ、申請から3か月以内に当局から審査結果が戻されます。取引が複雑な場合、市場競争において重大な懸念が発生した場合には、最終的な決定がでるまでに最大8か月ほどかかることがあります。
2.4 他に外国投資家が気をつけるべき認可要件はありますか?
上記の外国投資の承認や制限以外に、日本の投資家が注意すべき要件はありません。
SECTION 3: 投資技術
3.1 あなたの国で日本からの投資に使われる最も一般的な法人形態は何ですか?
日本からの投資でよく使用されている法人形態は、可変資本合同会社と可変資本株式会社の2つです。いずれの事業体も商業会社に関する一般法で規制されています。
適用法では、有限会社は商号または会社名で登録することが義務付けられています。この企業は、拠出金の支出のみが義務付けられているパートナーから構成されます。法人資本の出資は流通証券で行うことはできません。法人資本は、法律および会社の規定にある条件に基づいてパートナーが承認した場合にのみ、譲渡することができます。
一方、株式会社は会社名で運営されており、株主はその拠出額までの責任を負うことになります。さらに、法人資本は原則として自由に譲渡可能な株券で表します。
いずれの事業体も実質的には類似していますが、外国投資家の大半は有限会社を選択する傾向があります。有限会社は、税法上、多くの管轄区域でチェック・ザ・ボックス規則またはフロースルー税金の課税対象として見なされます。
3.2 これらの法人形態の設立と事業活動にとって重要な必要条件とは?
前述の法人の設立と運営には、政府の認可を得るために事前に許可証を取得し、登録を行い、メキシコの公証人の面前で特定の文書を作成しなければなりません。
このような企業設立の一般的な要件は次のとおりです。
1. 弁護士への権限委任。 各株主は、新会社の設立でメキシコの公証人の面前で弁護士が代理人を務めることができるように委任状を作成しなければなりません。
2. 会社名の認可。 株主に委任された代理人は、希望する企業名で新会社を設立するため、メキシコ経済省に申請書を提出し、承認を得る必要があります。
3. 定款。 株主は、新会社の運営条件を定義する定款を作成しなければなりません。これらの定款は、メキシコの公証人の面前で署名し、公的文書として作成する必要があります。
4. 登記。 メキシコの公証人が会社の定款を含む証書を発行した後、登記簿に会社を登記する必要があります。
5. 納税者番号。会社の登記が完了したら、税務上の目的のため、財務省の納税者登録に登録する必要があります。この登録を行うには、メキシコで課税が可能な住所が必要になります。
6. 海外投資登録。 さらに、会社の海外投資登録を行う必要があります。
SECTION 4: 紛争解決
4.1 現地の裁判所の施行と紛争解決の訴訟手続はどれくらい効果的であるのか?また、日本の投資家が特に気をつけるべき点とは?
地元の裁判所の決定は執行可能ですが、会社の管轄地域内の裁判所での訴訟手続は通常、時間がかかります。
取引に関与する当事者は、地方裁判所での紛争解決を避け、仲裁などの別の手段で紛争を解決することもできます。
4.2 あなたの国では日本との二国間投資保護協定を締結していますか?また、投資家によってその協定は一般的に活用されていますか?
はい。メキシコと日本は、経済連携強化のため二国間協定を締結しています。この協定は2004年に発効しました。
4.3 現地の裁判所は外国の判定を尊重していますか?また、国際仲裁判断は法的効力がありますか?
外国裁判判決は地方裁判所によって覆る可能性がありますが、国際仲裁裁定はメキシコ法の下で施行され、地方裁判所によって尊重されます。
SECTION 5: 外国為替規制と現地のオペレーション
5.1 外国の投資家が留意すべき外貨と為替制限は?
メキシコでは、外国為替に法的規制はありません。ただし、規模の大きい外国為替取引はメキシコ銀行(Banco de México)によって監視されます。
SECTION 6: 税務上の影響
6.1 日本の投資家にとって特に役に立つ有益な税の仲介法域または税制はありますか?
複数の管轄区域間で資金を扱う場合、関連するすべての要因と状況を考慮し、メリットとリスクを慎重に分析する必要があります。メキシコは、中南米で最も多く二重課税防止条約を締結している国であり、複数の管轄地域にわたる税務戦略を構築する場合、有益なオプションとなる可能性があります。
6.2 配当に対する法人税と源泉課税の適用率はどのくらいですか?
メキシコに居住する法人には、30%の法人税が課せられます。メキシコ税法では、企業ごとに法人税の支払い後の利益を示す純利益金勘定が検討されています。配当金の分配を行う場合、分配金額がCUFINの金額以下であれば、配当分の追加の税金を支払う必要はありません。
また、メキシコの居住者でない投資家に配当を支払う場合、源泉税率が適用されます。一般的に、10%の源泉徴収率が適用されますが、配当の受取人が納税義務を負う国とメキシコが二重課税防止条約を締結している場合、この税率は変わる可能性があります。
たとえば、日本の場合、メキシコと二重課税防止条約が締結されているため、一定の条件を満たせば5%の源泉徴収率が適用される可能性があります。
6.3 政府は税制上の優遇措置を構築していますか?
メキシコ政府は、幅広い税制優遇措置を用意しており、それは国内での特定の事業の成長を促すため、必要に応じて調整を行っています。このような優遇処置としては、資産の減価償却の促進や補助金などがあります。また、特定の投資手段に対する税制の透明化により、受益者レベルで所得税の計算や支払いができる租税体系を用意しています。ただし、特定の投資または事業に適用される利益は個別に計算する必要があります。
6.4 あなたの国と日本との間で相互的な租税協定はありますか?あればそれは投資家にとってどのような助けとなりますか?
6.2で回答したように、メキシコと日本は、二重課税を回避し、脱税を防ぐための協定を締結しています。配当の受領者が有効な受益者であり、配当が支払われた納税年度が終了する直前の6か月間に配当を支払う企業の議決権付き株式を25%以上取得した場合、この条約の条項により、メキシコでの源泉徴収率が5%になります。
メキシコ企業の株式取得率によっては、源泉徴収率で優遇措置を利用できる場合がります。また、一定の条件を満たせば、メキシコ企業からの配当を日本で課税免除される場合もあります。メキシコでの投資の種類を決める場合には、これらの潜在的な利益も考慮する必要があります。
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著者略歴 ヘスス・ロドリゲス・ダバロス メキシコ・メキシコ市 電話: 521(55) 5202 0405 メール: jrodriguez@rdabogados.com.mx ロドリゲス・ダバロスは、メキシコのエネルギー業界を専門とする法律事務所Rodriguez Dávalos Abogados(RDA)の共同設立者です。RDAは、メキシコで最初に行われた天然ガスのSWAP事業、民間初のLPG用パイプライン、メキシコで民間初の石油化学製品用パイプラインの法的および財務戦略の構築、米国への最初の湿潤ガスの輸出パイプライン、ロス・ラモネスの天然ガスパイプラインの規制対策と契約上の戦略の策定、民間初のナフサ加工工場など、20年以上にわたり、様々なプロジェクトをサポートしてきました。 ロドリゲスは、メキシコ人権連合(ADDV)の会長、メキシコ天然ガス協会(AMGN)の理事会メンバー/幹事、世界エネルギー会議メキシコ支部の法律顧問を務めています。また、メキシコエネルギー法アカデミーの設立メンバーでもあります。 |
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ホセ・エドアルド・プマレホ アソシエイト、Rodríguez Dávalos Abogados メキシコ・メキシコ市 電話: 52 (55) 5202 0405 メール: jpumarejo@rdabogados.com.mx ホセ・プマレホは、Rodriguez Dávalos Abogadosのアソシエイトです。主に、企業コンサルタントとM&A、エネルギーインフラプロジェクトを担当しています。 専門的な経験を生かし、国内外の多くの顧客を抱え、様々な取引一般入札を支援してきました。いわゆるラウンドワン公募プロセスに参加し、メキシコの携帯電話会社であるNextel MexicoとIusacellの買収プロセスやAT&Tの子会社設立も担当しました。また、コマツの複数の代理店の買収、建設・ 採鉱装置の販売事業再編をサポートしました。メキシコでの三洋電機のテレビ製造部門の売却も担当しています。 プマレホは、InstitutoTecnológicoAutónomodeMéxico (ITAM) の法学部を卒業しています。「Orphan Drugs: alternative regulation for efficient and effective delivery」という論文で、XXI ITAM Alumni Investigation賞を受賞しまし た。現在は、動物保護と環境保全のプロボノ活動に積極的に取り組んでいます。また、国際弁護士協会(IBA)のメンバーでもあります。 |